スミマサノリ「月曜日にオジャマシマス」

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先日、ある取材のついでに温泉で1泊した。久しぶりの温泉は疲れた体と弱った心を充分に癒してくれた。無理して1泊して本当に良かったと思っている。出来れば月1ペースで温泉につかりたい。と思ったが、現実はそんなに甘くなくて、次に温泉につかれる日がいつになるのか、見当もつかない。

話は変わって、ゆで卵である。以前、「タマゴを8時間茹で続けるとどうなるか?」という記事でも書いたのだが、僕はゆで卵が好きだ。8時間茹で続けても平気なくらい、好きだ。

そしてここで、温泉と卵がつながる。

そう、温泉には温泉卵があるのだ。温泉と卵。僕の好きな物が2つも揃っている。「CR僕の好きな物」というパチンコ台があったら、リーチ状態である。やは り温泉は素晴らしい。しかし、しつこいようだが、そんなに簡単に温泉に行くことは出来ない。でも行きたい。行って温泉卵も食べたい。

温泉から帰って来て、そんなことばかり考えていたある日、ふとグッドアイデアが浮かんだ。温泉の入浴剤を入れたお湯で温泉卵を作ったらどうだろう?

実際に、やってみた。



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【入浴剤と卵を調達】

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ドラッグストアで入浴剤を調達

なるべく色々な種類の温泉で温泉卵を作りたい。ドラッグストアで入浴剤を物色すると、お誂え向きの商品があった。

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ツムラの日本の名湯

「ツムラの日本の名湯 源泉の愉しみ」という入浴剤セットである。なんと、全国10カ所の温泉が1つのパッケージに集約されているのだ。まさに温泉のベストアルバム。ベリー・ベスト・オブ・日本の温泉である。

パッケージの裏にはこの商品の開発へのこだわりが載っていた。

『厳選した温泉地の湯質を徹底的に分析。さらに各温泉地と共同企画のもと、歴史・文化・景観を現地調査し、温泉地の情緒を「湯色」と「香り」で表現しています』

歴史や文化までを考慮して各温泉地の情緒を表現しているのだ。このセットがあれば温泉に行かなくてもいいのではないか? そんな気にさえなってくる。今回の試みの成功が見えてきたところで、スーパーで卵も調達した。


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卵調達

これで役者は揃った。
あとは、入浴剤を入れたお湯を使って温泉卵を作るだけである。

温泉卵の作り方を調べると、割りと簡単に作れる事が分かった。手順は以下の通りである。

1.お湯で濡らしたキッチンペーパーで卵を包み常温にする。
2.鍋でお湯を沸かす。
3.沸騰したら火を止めて、1を入れてフタをする。
4.15分間放置。

この手順の中で、「鍋でお湯を沸かす」という工程に「入浴剤を入れる」というオプションが付く訳だ。

入浴剤は1包あたり30グラム入っていて、通常200リットルのお湯で混ぜることになっている。今回は2リットルのお湯を湧かして半熟卵を作るので、入浴剤は0.3グラム入れれば良い計算である。温泉卵が上手く行ったら、残りをお風呂に入れて愉しむことも出来る。

もう、本当の温泉に行く必要がない。



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【4種類で試そう】

とりあえず、今回は4種類の温泉で温泉卵を作ることにした。全種類で試したいところではあるが、いっぺんに食べられる量は4個が限界である。

にごり湯系から「登別カルルス」と「乳頭」を、透明湯系からは「嬉野」と「道後」を、それぞれ選んだ。それぞれ成分が違うという理由と、「乳頭」という名前に惹かれたという理由から、この4つに決定した。


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後で分からなくならないように、卵に名前を書いた

早速、それぞれの入浴剤を使って温泉卵を作っていこう。
まずは透明系の「嬉野」の湯から、上記の手順を追っていく。


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水を2リットル鍋に入れる

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入浴剤を0.3グラム程度入れる

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沸騰させる

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沸騰したら火を止めてキッチンペーパーで包んだ卵を入れる

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フタをして15分間放置

15分後、フタをあけると温泉の香りがフワッと漂った。
本当に嬉野温泉に来ているようだ。


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卵を取り上げる

完璧な温泉卵が出来上がっているはずである。

茹で上がった卵の匂いを嗅いでみた。


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匂いを嗅いでみた

薄らと嬉野の香りがする。

嬉野温泉に行ったことはないが、僕には分かる。嬉野温泉はこういう香りがするはずだ。

殻を割って中の仕上がりを確認する前に、他の3種類の温泉でも作ることにした。
全部出来上がったところで、それぞれの出来映えを比較したい。


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【道後温泉】

弱アルカリ性重曹湯。ナトリウム、炭酸水素塩湯

「瀬戸内の澄んだ青空と穏やかな日ざしが心にうかぶ爽やかな香り。御影石の坊ちゃんを想わせる緑がかった青色のお湯(パッケージより)」


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道後温泉で

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作った温泉卵


【乳頭温泉】

含マグネシウム重曹湯。ナトリウム、マグネシウム、炭酸水素塩湯

「乳頭山からの涼風が運ぶ、心落ち着く緑葉の香り。山深く一面の雪景色を想わせる、真っ白な乳白色のお湯です(パッケージより)」


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乳頭温泉で

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作った温泉卵


【登別カルルス】

重曹芒硝湯。ナトリウム、硝酸塩、炭酸水素塩湯

「日本一のオゾン地帯・オロフレ峠の原生林から漂う、澄み切った大気の香り。北の山々の白雪とヌプルベツ※を想わせる乳白色のお湯です(パッケージより)」

※ヌプルベツ=アイヌ語で白く濁った川


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登別カルルス温泉で

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作った温泉卵

すべての温泉卵が茹で上がった。


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4種類の温泉卵

温泉卵なので、コップの中に出すことにした。

それぞれ、温泉によって仕上がりが違うのか?
それとも?


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嬉野の温泉卵?

嬉野から割ってみたら、完全にゆで卵になっていた。

温泉卵のレシピ通りにやったはずなのに…。ゆで卵だ。

何がいけなかったのだろう? 放置時間が長過ぎたのだろうか?

他の温泉卵はどうだ?


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道後温泉

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乳頭温泉

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登別カルルス

全部ゆで卵になっていた。
温泉卵じゃない。

困ってしまったが、もう後戻りは出来ない。
そもそも、僕は温泉卵よりもゆで卵の方が好きなのだ。

ゆで卵になってくれて、むしろ良かったと思う。

問題は黄味の具合である。
黄味が半熟だったら完璧だ。


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半熟じゃない

僕が好きな半熟ではなく、固ゆで状態だった。

……。

まあ、良い。

温泉で作ったことに変わりはないのだ。普通のゆで卵とはひと味違うはずである。
とりあえず食べてみよう。


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食べてみた

普通のゆで卵だった。温泉の香りは一切しない。


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コーヒーと一緒に食べるのが好き

1時間以上かけて4つの入浴剤で試した訳であるが、結果的には普通のゆで卵が出来上がっただけだった。

インスタントな温泉卵づくりは失敗である。

しかし、作っている間は日本各地の温泉にいるような錯覚に陥ることが出来たし、大好きなゆで卵を4つも食べることが出来た。それはそれで幸せである。


というのはやせ我慢で、今まで以上に本当の温泉に行きたくなってしまいました。


※入浴剤は入浴以外の用途には使用しない方がいいと思うので、決してマネはしないで下さい。


(2009/9/21 住正徳)

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