スミマサノリ「月曜日にオジャマシマス」

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ゆでタマゴと言えば板東英二さんである。ゆでタマゴが大好きで、東京大阪間の新幹線で6個も食べてしまうらしい。そんなに食べて大丈夫なのか? 他人事な がら心配になってしまう。そんな坂東さんにはまったく及ばないが、僕もゆでタマゴが大好きだ。ラーメン屋さんではトッピングに味玉を乗せて、さらにゆでタ マゴを食べる。ラーメン1食につき2個は食べている計算だ。ゆでタマゴとコーヒーという組合せも最高であるが、ゆで卵を置いている喫茶店は少ない。とても 残念だ。

とにかく、ゆでタマゴが大好きなのだ。
しかし、ゆでタマゴだったら何でもいい、という訳ではない。

坂東さんは固くゆでたタマゴが好きらしいが、僕は断然半熟派である。半熟タマゴを作るのもうまい。最高の状態の半熟タマゴを食べるために、試行錯誤を繰り 返したからだ。水が沸騰してから3分30秒後に取り出して流水で急冷。そうすると、僕にとっての完璧な半熟タマゴが出来上がる。

ある日、いつものように半熟タマゴを作りながら、ふと思った。
何時間もタマゴを茹で続けたらどうなるんだろう? 例えば8時間とか。

今まで見た事のないゆでタマゴが出来上がるかもしれない。

やってみよう。


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【ただひたすら、茹でる】

早速、スーパーのタマゴ売り場にやって来た。森のたまご、榛名のたまご、おいしい赤たまご、名古屋コーチン、ヨード卵光、地鶏卵…、色々な種類が並んでいる。


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スーパーの卵売り場

どのタマゴもきっとおいしいのだろうが、数ある中から僕が選んだのは「生産者の顔が見えるたまご」という商品だ。生産者の顔写真が印刷されている。


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生産者の顔が見えるたまご

姫路ファームの野村さんが作ったタマゴである。

丹精込めてタマゴを作った野村さんのためにも、きっちり8時間茹でていこう。そして、今までにない「ゆでタマゴ」が出来上がったら、野村さんにも教えてあげないといけない。


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2個茹でます

時間茹で続けるために、ティファールも用意しておいた。お湯が蒸発してきたら、沸騰したお湯をティファールで補充していくのだ。


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ティファールで熱湯を補充しつつ、茹で続ける

これで茹で続ける準備は整った。

果たして、タマゴを8時間茹で続けるとどうなるのか?

正直、まったく予想がつかない。
もしかしたらヒヨコになるかもしれない。


午前9時、大きな鍋にたっぷりの水と卵を入れてガスの火をつけた。
実験スタートである。

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鍋に水と卵を入れて

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ガスの火をつける


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茹で始めてから30分過ぎたところで、早速お湯が少なくなってしまった。
ティファールで熱湯を補充する。


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熱湯を補充

1時間に2回は熱湯を補充しないといけないらしい。ということは、8時間なので全部で16回。1度火にかけたらしばらくは放っておけるかと思っていたが、結構な手間である。

仕事をしつつ、鍋を気にしつつ、8時間。
落ち着かない1日になりそうだ。


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2時間経過

茹で始めてから2時間が経過した。
鍋の中のタマゴを観察すると、所々、殻が割れている。


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殻が割れ始めた

タマゴだって2時間も茹でられることを想定していないのだ。殻が耐えられなくなってしまった。

しかし、ここで止める訳にはいかない。
割れてしまった殻の事は気にせず、茹で続けていく。


【ゆでタマゴも気になるが、バンドも組みたい】

ゆでタマゴの事は少し置いといて、先日、「少年メリケンサック」という映画を観た。ネット上で見つけたパンクバンドの映像に目をつけたレコード会社が本人 に連絡を取ったらその映像は20年以上も前のものでみんなオッサンになっていた、という話でとても面白かった。影響を受けやすい僕は、「少年メリケンサッ ク」を観て以来、ずっとバンドを組みたいと思っているのだ。

よし、楽器屋さんに行こう。


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やっぱりギターかな
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こういう形も恰好良い

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バンドも用意しないといけない

やっぱりバンドをやるならギターがいい。「少年メリケンサック」では、木村祐一さんがギターを弾いていた。弾き始める時、ギタをアンプに近づけてギュイーンと音を鳴らすシーンがあって、恰好良かった。あれがやりたい。

しかし、僕はギターを弾けない。
ギターはあきらめよう。

そして、早く事務所に戻らないと鍋がひからびてしまう。
急いで事務所に戻る。


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4時間経過、13時

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1つのタマゴの割れ目が大きくなってきた。
もう1つのタマゴは大きく割れてはいないが、ヒビが全体に渡っている。

大丈夫だろうか?

次の熱湯補充までの間、もう一度楽器屋さんに行こう。


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ベースも恰好良い

ギターがダメならベースでも良い。「少年メリケンサック」では佐藤浩市さんのパートだ。ツンツンに尖ったパンクヘアで恰好良かった。あの髪型をやるにはもっと髪を伸ばさないといけない。

それより何より、僕はベースが弾けないのだ。
事務所に戻ってお湯を補充しよう。


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5時間経過、14時


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タマゴの割れ目がホタテみたくなってきた。
お湯の色が若干黄色い。黄身が漏れてしまっているのかもしれない。

タマゴの先行きが不安ではあるが、バンドの方もなんとかしないといけない。

楽器屋さんへ。


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ドラムにしよう

ドラムも恰好良いと思う。「少年メリケンサック」の三宅弘城さんである。ヤングという役名で、グループ内では最年少だけど42才という設定だった。痔を患っているから立ったままドラムを叩いて、それがまた粋だった。

楽器屋さんには外に音が漏れないドラムセットが売っていて、実際に叩くことが出来る。


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これなら近所迷惑じゃない

このセットを買えば、近所から怒られることなく練習出来る。
しかし、そう、僕はドラムを叩けない。事務所に戻る。


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6時間経過、15時

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かなりパックリと割れてきた。
鍋からは何となくいい匂いがしている。タマゴの出汁が出ているのかもしれない。

お湯を補充してもう一度楽器屋に行く。

ここまで、ギター、ベース、ドラムと見てきたが、どれも購入までには至っていない。なぜなら、僕は楽器が一切出来ないのだ。

こうなったらもうボーカルしかない。「少年メリケンサック」では田口トモロヲさんがジミーという役でボーカルを務めていた。。拡声器を使って絶叫したりして、とてもパンクだった。

楽器屋さんに拡声器は売っていなかったので、マイクスタンドで雰囲気を掴んでみる。


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ボーカルだ


これならやれそうだ。
よし、事務所に戻ろう。


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7時間経過、16時

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ゆでタマゴの方も残り1時間となった。
楽器屋さんと事務所を行ったり来たりして、バンドでの方向性は見えた。

あとはゆでタマゴである。

8時間茹でたタマゴはどうなっているのか?

ついに、そのベールが明かされる。


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【初公開(多分)、これが8時間茹でたタマゴだ】

朝の9時から茹で始めて8時間が経過した。会社の始業時間から終業時間まで、しっかり茹で上げたタマゴはどうなったのか?


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8時間経過、17時

ガスの火を止めてゆでタマゴを水で急冷する。
これはいつものゆでタマゴの作り方と一緒だ。


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水で急冷

すると水の勢いで、タマゴの殻の上半分がパカッと外れた。昔のアニメ、「カリメロ」状態である。


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殻が

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外れた


いつものゆでタマゴよりも殻を剥くのが簡単だ。
パラパラ取れる。

全部の殻を剥くと、こんな状態になっていた。


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8時間茹でたタマゴ(殻なし)

ただの水で茹でただけなのに、仕上がりが味付けタマゴのようになっている。自らが出した黄身のエキスを吸収しただろうか?

中の状態を見てみよう。


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中はこんな感じ

味塩をかけて食べてみた。

白身の感じは普段とそれほど変わらないが、黄身の感じが随分違う。相当パサパサしている事を想像したのだが、そうではなかった。かなりクリーミーな黄身に仕上がっていて、おいしい。

タマゴを殻ごと8時間茹でると、
 ・殻を剥きやすい
 ・見た目は味付けタマゴみたいになる。
 ・黄身がクリーミー。

という結果が分かった。


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うん、クリーミー

この結果を、このタマゴを作った野村さんにも教えたい。

そして、

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スウィングガールを目指すのもいいかもしれない


(2009/3/16 住正徳)

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