すみましん/ムッシュ・シマウマ リターンズ/遥かなるサクラダファミリア

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遥かなるサクラダファミリア

「もしもし……」
「こんにちわ!初めまして」
「こういう所にはよく電話するんですか?」
「いや、よくって訳ではないけど」
「じゃあ、たまに?」
「まあ、たまに」

「そういうあなたは?」
「僕もよくかけている訳じゃあ、ないです」
「じゃあ、たまたま?」
「ええ、たまたま」

「どうして電話かけたんですか?」
「仕事の帰りにティッシュをもらって、そこにココの電話番号があったから」
「ティッシュに?」
「そう、ティッシュに」

「あなたは?」
「いや、どんなもんかと思って」
「ひやかし?」
「いえいえ……」
「誰でもいいから、話しをしたくなったとか?」
「まあ、そんなとこです」

「こういう電話で実際に会ったりしたことあるんですか?」
「私はないけど、友だちは会ったりしてるみたい」
「電話で1回話しただけで?」
「会話が弾んだりしたらOKなんじゃない?」
「会話が弾む?」
「そう、結構弾む場合もあったりして……」
「今は弾んでるんでしょうか?」
「あまり弾んでないんじゃない……」
「そうですよね」
「っていうか、むしろ沈み気味かも」

「普通、どういう会話で弾むもんですか?」
「良く分からないけど、例えばお互いのルックスについて語り合ったりとか……」
「ルックスですか?」
「芸能人でいえば、誰に似てるとか」
「芸能人?」
「そう。そういう所から会うキッカケが生まれたり」
「じゃあ、あなたは誰に似てるんですか?」
「私? 自分ではそうは思わないんだけど、スピードの島袋寛子ちゃんってよく言われる」
b「はあ……」
「あなたは?」
「いやあ、僕は特に言われたことはないです……」
「そういう時は嘘でも誰か芸能人の名前を言わないと」
「嘘でも、ですか?」
「そう。嘘でも」
「……」
「誰?」
p「んー、強いて言えば巨人の上原とか……」
「微妙なラインね」

「なんか、あなたみたいな人だと調子狂うわね」
「調子ですか?」
「普通もっとガツガツと自己ピーアールをしてきたり」
「ガツガツと、ですか?」
「っていうか、みんなアポを取るために必死になるもんよ」

「女の子と約束をして、うまくいけばHができる」
「……」
「こういう電話で会ったような子なら、あと腐れなくつまみ喰いができる」
「……」
「お金もかからない!」
「……」
ff「バッカみたい!」

rit.「結局は騙し合いみたいなものよ」
「え?この電話がですか?」
「そう。本当のことなんて、言ったってしょうがないし」
「じゃあ、島袋寛子ってのも?」
「それは、割と本当」
「じゃあ、何のために電話してるんですか?」
「バイトだから」
「バイト?」

「だから、都合のいいHなんて、ないってことよ!」
ガチャッ!
ツーッ、ツーッ、ツーッ。

「オアイテガカワリマス」(コンピューターボイス)

「もしもし……」
d.c.「こんにちわ!初めまして」


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