退院しました。 と、3週連続でこの場を借りて自分の病状報告をしてしまい、申し訳ありません。まだ松葉杖での生活ですが、来週からはいつものコラム形式で復活する予定で す。悪化して再び入院、なんてことにならないよう無理をしないように心がけていますが、「無理をしない」というところに無理があります。2週間近く休んで しまったので、無理をしないと追いつけません。無理しない程度に無理をしながら慣らしていこうと思っています。 |
当たり前のことではあるが、入院中はかなり規則正しい生活を送っていた。朝6時に起床して、体温と血圧を測り看護婦さんに昨日のトイレの回数を告げる。7 時頃におばちゃんがお茶を入れてくれて7時半には朝食だ。朝食を食べ終わると歯を磨き、一息つくと掃除のおじさんがゴミを回収にやってくる。それからしば らくボーッとしていると、9時半になってお尻に注射をされる。筋肉注射なので結構痛い。注射が終わってボーッとしていると、11時過ぎにお茶をいれてくれ る。12時キッカリに昼食で、食べ終わると歯を磨き、ボーッとしていると2時半からリハビリである。リハビリが終わって病室に戻ってしばらくボーッとして いると17時過ぎにお茶をいれてもらい、18時に夕食。夕食が終わって歯を磨きボーッとしていると21時になって消灯である。 食事以外は主にボーッとしていたわけだ。そんな生活を12日間も続けていたので、中々仕事のペースがつかめない。そして、ふと、病院で食べたカレーについて思いを馳せてしまう。 入院してすぐの金曜日にカレーが出た。毎週金曜日はカレー曜日と決まっているのだろう。海軍が週に1回カレーを食べて曜日感覚を失わないようにしていたの と同じだ。病院にもそんな習慣があるのだ。次にカレーを食べる前には退院したい、と考えていたら、週明けの火曜日にカレーが出た。特にカレー曜日を決めて いる訳ではないらしい。 12日間の入院生活で、最終的にカレーを2回食べたのだが、1回目のカレーはご飯がおにぎりだった。最初のうちは体を動かすことが出来なかったので、毎食 ご飯をおにぎりにして出してくれていたのだ。だから、おにぎりとカレーのルー、という組合せになった。これは困る。カレーのルーをどうしたらいいのか分か らないのだ。おかずでもなければスープでもない。おにぎりをルーに浸してから食べる、というナンで食べる時のような方法も考えたが、それはやめといた。 退院してからまだカレーを食べていない。病院のカレーはパンチに欠けるので、退院したらすぐにココ壱のカレーを食べたいと思っていた。でも、まだ食べてい ない。松葉杖をついてココ壱に入るのは、何か違うような気がするのだ。「元気があれば何でも出来る」。アントニオ猪木さんの名言が心にしみる。元気がない とココ壱だって食べられない。 タバコの話。 病院の喫煙所にA4サイズの張り紙があって「あなたはこれでもタバコを吸いますか?」という標語が載っていた。例えば、真っ黒になった肺の写真とか、そう いうビジュアルがあった上で「これでも」なら分かる。だが、「これでも」にあたる物が一切見当たらないのだ。張り紙の下に、標語の紙と同じサイズで張り紙 があった「跡」だけは残っている。きっとそこにはショッキングなビジュアルが貼ってあって、それがあまりにも生々しくて、喫煙者から苦情が出たのだと思 う。結果、上の標語だけが残り、一休さんのとんちみたいなことになっているのだ。 と想像していたのだが、退院してから気付いた。あの張り紙の「跡」に「これでも」の意味が込められていたのかもしれない。壁がこんなに汚れるほ ど、タバコには害があるんですよ、という警告だ。だとしたら、随分と回りくどい表現である。そんな手の込んだ方法で脅されなくても、タバコが体に悪いこと は充分承知している。大きなお世話だ! と、時間差で逆ギレしてしまった。 せっかく退院したのだ。病院の喫煙所に腹を立てている場合ではない。とにかく、一刻も早く松葉杖を卒業したい。先日の台風の朝、傘をさせずにずぶ濡れになりながら、つくづくそう思った。 早くこれくらいの姿勢がとれるようになりたい (2009/10/12 住正徳) |