最近、世の中が殺伐としているような気がする。暑くなってきてみんながイライラしているから余計そう感じるのかもしれない。肩と肩がぶつかっても何も言わずに行ってしまう人が多いと思う。「すみません」の一言さえあれば、お互い気持ち良くやり過ごせるのに。謝ってしまったら自分の否を認めることになってしまう、という意識が強いからだろうか。アメリカ人じゃないんだから、謝ったら良いと思う。謝る→許す、そういうコミュニケーションがあれば、世の中が優しくなると思うのだ。「生まれて、すみません」とまではいかなくても、もっと謝っていこう!と、普段から謝りっ放しの僕は思う。 例えば工事現場である。 最近、工事現場で謝っている人のイラストを見かけなくなったような気がする。 気になったので工事現場に注目して渋谷の街を歩いてみた。開発が止まらない街、渋谷である。工事現場は多い。 謝ってる人のイラストはない 鉄道工事を知らせる看板も 文面だけでイラストはない 平成27年まで「ご迷惑をおかけします」という状態なのに、謝ってる人のイラストがないのだ。 さらに他の現場を見ても、 イラストはなく 警告される 「DANGER、危険」という注意書きのみで、謝る人の姿はない。 さらに他の現場では、 強い警告 現場の仮囲いへの落書きを禁止する警告文しか見当たらない。「違反した場合には、処罰されます」という強い警告である。もちろん、仮囲いに落書きなんてし たらいけない。処罰されて然るべきだと思うが、その前に「ご迷惑をおかけします」の一言と、謝る人のイラストが欲しいところである。 そんなことを考えながら渋谷の街を歩くうち、謝る人のイラストを求める自分の方が困った人間なのかもしれないと思えてきた。ある意味、謝罪を強要している のだ。世の中を優しくしていないのは、こっちかもしれない。工事現場の人たちだって大変なのである。それなのに「まずイラストで誤りなさい」なんて、充分 面倒臭い人間である。 謝罪を強要する自分に自己嫌悪を感じつつ、工事現場のイラストを諦めかけた時、ブルーの仮囲いが目に入った。 ルミネの工事現場 8月26日にオープンする「ルミネマン」の工事現場である。渋谷にもルミネが進出するらしい。隣接する丸井との激しい競争が予想される。 そんなルミネの仮囲いに、例のイラストを見つけた! ご協力をお願いします 「ご協力をお願いいたします」と頭を下げる男性のイラストである。 さらに、 犬も一緒にお願いしている 犬にもお願いされているのだ。 そんな風にお願いされたら協力しようという気持ちに、…なる。 なる? なる? なんだかこの男性の顔を見ていたら、優しい気持ちが薄れて来た。 なんでだろう? 頭を下げられてる気がしないのだ。パッと見開かれた瞳が挑戦的だからだろうか? いかんいかん。 せっかく謝罪イラストを見つけたのに、それに対して腹を立ててどうする。謝ってくれるだけ良しとしなければいけないのだ。 更に、渋谷の街を歩いてみた。 |
【家電量販店は謝っている】 視野を広げよう。 工事現場だけに限らず街全体で「謝ってる人」を探すことにした。 すると早速、ビックカメラの裏口で謝ってる人を見つけることが出来た。 納品業者の方へのお願い ビックカメラの納品口で、女性店員のイラストが頭を下げてお願いしている。「納品の際はお近くの有料駐車場を利用してください」と訴えている。 神妙な面持ち 本当に申し訳なさそうである。せっかく納品しに来てくれたのにすみません。「納品、すみません」である。 更に、昨年渋谷に進出して来たLABIでも謝っている人を見つけた。 LABIの店頭にて ペットを連れて入店するお客さんに対して、「ご遠慮ください」と頭を下げている。 少し涼しげに ビックカメラの人ほど神妙ではないが、誠意はしっかりと伝わってくる。 LABIはこれだけで終わらない。店内でも謝ってる人がいた。 各階ごとのお会計をお願いいたします 例えばパソコン周辺機器と掃除機を買おうとしたら、会計はそれぞれのフロアで済ませないといけないのだ。それは確かに面倒臭い。出来れば1回で済ませたいと思う。 お願いする人 しかし、こうやって頭を下げられると各フロア毎に会計しようと思えてくるから不思議である。 |
【ドン・キホーテは謝っているか?】 ビックカメラ、LABIと並んで、僕が良く利用するドン・キホーテの様子も確認することにした。 ドン・キホーテは謝っているのだろうか? 激安の殿堂 ドン・キホーテと言えば、ドンペン君である。 店内のあらゆる場所で、ドンペン君の姿を見かけることが出来る。 アイスを売るドンペン君 このドンペン君に頭を下げられたら、大抵のお願いも聞いてしまうと思う。 どうだろう? ドンペン君は頭を下げているのだろうか? 下げていた 食品売り場で深々と頭を下げるドンペン君。「食品の配送は一切お受けできません!」と言っている。 さらに、 お子様をお連れのお客様に 頭を下げるドンペン君 配送を断るドンペン君よりは浅いお辞儀であるが、表情が見える分、ドンペン君のお願いを聞いてあげようという気になってくる。 子供を連れてドン・キホーテの食品売り場に来る際は、子供を抱いて歩くことにしよう。 |
お店だけではない。 JR渋谷駅のトイレでも、感じよく頭を下げている人がいた。 渋谷駅のトイレで 頭を下げる人 こんな奇麗な女性から「お気をつけて」なんて言われたら、いつも以上に気をつけて用を足すと思う。「清掃ご苦労様です!」と敬礼してしまうかもしれない。 更に、東京メトロへと続く地下道にあるジューススタンドでは…、 ジューススタンドで お礼を告げる カバの親子 「いつもありがとう」とお礼を言うカバの親子を見かけた。何故カバで親子なのか? その真意は分からないが、「ありがとう」と言われて悪い気はしない。 ありがとう、いい言葉である。 |
ほぼ半日、謝罪している人を探して渋谷の街を歩いた。結果、そんなに謝ってる人を見つけることが出来なかった。途中、「なんでもっと謝らないのか」と街に対して不満を抱いたのだが、良く考えたらみんな別に謝るようなことはしていないのだ。だから謝る必要もない。 そんな当たり前の結論で、申し訳ありません(ペコリ)。 (2009/8/3 住正徳) |