区役所で何か用事を済ませたあとに、敷地内のレストランで食事すると何だか幸せな気分になってくる。もの凄くおいしい訳でもないのだが(そんなことを言っ たら失礼ですが)、区役所のレストランには何とも言えない魅力があるのだ。和洋中が揃っていて価格もリーズナブルだからだろうか? いや、多分、それだけ じゃない。食事目的で行く所じゃない場所にあるレストラン。その状況にグッと来るのだと思う。不謹慎かもしれないが、大きな病院に入っているレストランに もかなり惹かれる。誰かのお見舞いに行ったりすると、必ず病院のレストランで食事をして帰る。 今回は、そんな独特な魅力を放つ区役所レストランを何カ所か巡ってみようと思う。それぞれの区役所の特徴を知るために、メニューを「カレー」に絞る。 区役所カレーの食べ比べである。 |
【渋谷区は本格的なインドカレー】 区役所カレー巡りの一カ所目は渋谷区役所だ。うちの事務所から渋谷区役所まではとても近い。歩いて1分もかからないくらい近い。何たって、事務所の隣りが区役所なのだ。 まずは近場の区役所から攻めていく。 渋谷区役所 渋谷区役所のレストランは地下1階にある。「キッチンクワトロ」という名前通り4つのお店が集まっていて、その中の1つがインドカレー専門なのだ。西新宿に本店を構える「ターリー屋」が渋谷区役所に支店を出している。 キッチンクワトロの中の1つが インドカレー専門の「ターリー屋」 本格的なインドカレーを690円でいただけるらしい。手描きのポスターには「インド料理専門店の意地をお見せします」と書いてある。 このターリー屋以外のレストランは「洋食ケニヤン」「和食魚屋」「中華じょいふる」という3店で、それぞれメニューも豊富である。そんな中で1店だけインドカレーしか出さないのである。相当な意地っ張りなのかもしれない。味に対する期待が高まる。 トレーを持ってターリー屋に向かう。 2時過ぎという中途半端な時間だったので、お客さんの数は少ない。 ターリー屋の前へ 厨房の中で働く人たちは全てインドの人のようだった。さすがは本格的なインド料理店である。メニューは690円のターリ-定食のみであるが、3種類あるカ レールーの中から好きな物を2つ選ぶシステムになっていた。3種類の内訳は、甘口、中辛、辛口である。分かり易い。辛口と甘口を頼んだ。 2種類のカレーがトレーの上に乗り、さらにヨーグルトとイエローライス、目玉焼きまで乗る。ここまででも大満足であるが、ターリー定食はこれだけでは終わらない。なんとその場でナンを焼いてくれるのだ。 よっ、意地っ張り! その場でナンを焼いてくれて これで690円! 街のインド料理屋さんだと、これだけのセットなら1000円はくだらないと思う。それがたったの690円である。タクシーの初乗りよりも安い。 こんなに大きい 味の方も申し分ない。区役所でこんなに本格的なインドカレーを食べられるとは思ってもみなかった。しかも安い。 区役所カレー巡り、1カ所目にしてピークを迎えてしまったかもしれない。これを越えるカレーに出会えるだろうか? |
【港区役所のロマンチックなカレー】 渋谷区役所の次は港区役所だ。山手線浜松町駅から歩いて5分ほどの場所にある。 事前調査によると18時には閉店らしい。17時半までには区役所に着いてなければならない。渋谷から浜松町に急ぐが、さっきインドカレーを食べたばっかり なので、全くお腹が空いていない。山手線の車内を行ったり来たりしてカロリーを消費しようかと考えたが、不審者に見られては困るのでやめといた。 港区役所 港区役所のレストランは建物の最上階、11階にある。一番高い所にあるレストランといえばデパートのレストランである。そういえばデパートのレストランもワクワクポイントが高い。港区役所のレストランへの期待も高まる。 カレーライス 370円 食券機で食券を購入して、レストランの中へ入った。渋谷区役所よりも更に中途半端な時間だったせいもあり、お客さんは1人もいない。 カレーが370円でクリームソーダは300円。クリームソーダは贅沢品だ 気になるメニュー「健康促進ランチ」 貸し切り状態 厨房のおばさんに食券を渡してカレーをよそってもらった。なんとなく実家っぽいカレーに味噌汁がついて370円。安い。 おばちゃんがよそってくれる 安くてボリュームたっぷりな港区役所のカレー。それだけでも充分ではあるが、ここのレストランには他にも大きな見所がある。 東京タワーがどんっ! そう、眺望が凄いのだ。窓際の席に座ると東京タワーを間近に見る事が出来る。訪れたのが夕方だった事もあり、全体的にロマンチックな雰囲気が漂っている。 東京タワーを横目に カレーを食べる これだけロマンチックな眺望だったら、夜も是非営業してもらいたいところである。しかし、ここの営業時間は18時まで。 その証拠に、閉店準備に忙しいおばちゃんがだんだんこっちに近づいてくる。 閉店準備のおばちゃんが 近づいてくる おばちゃんの強いプレスを感じつつ、急いでカレーを食べた。 ここから見る夜の東京タワーは相当キレイだろうに。もったいない。 |
【季節限定サンマカレーがある目黒区役所】 渋谷区、港区とまわった翌日、目黒区役所にやって来た。目黒といえば、落語「目黒のサンマ」である。毎年、何千匹ものサンマを焼いてふるまう「目黒のさんま祭」も有名だ。 この目黒区役所でも秋になると「サンマカレー」なるメニューが登場するらしいが、今はまだ秋じゃない。残念ながらサンマカレーを食べることは出来ないのだ。 目黒区役所 カレーライス350円 サンマカレーは秋までの楽しみにとっておいて、ノーマルなカレーライスの食券を購入した。350円と港区役所よりも20円安いが、港区役所のカ レーには味噌汁がついていた。目黒区役所のレストランでは味噌汁を50円で販売していたので、味噌汁をつけると港区役所よりも30円高くなる計算である。 食券入れ 目黒区役所のカレー 前日から引続き3食目のカレーである。確かにカレーは大好きだけど3食続けて食べるのは初めてだ。正直言うと、ラーメンを食べたい。醤油ベースでメンマとチャーシューとナルトが乗っているだけの、シンプルなラーメンを食べたい。 しかし、自分で課した「カレー縛り」というルールをここで破る訳にはいかない。 少しでも目先が変われば、と思い50円の味噌汁をつけて目黒区役所のカレーをいただく。 いただきます おいしい。3食目だというのに、おいしい。渋谷のインドカレーは別物として、港区と目黒区のカレーを比べると、断然目黒のカレーの方が好みに合う。 秋のサンマカレーも楽しみだ。 レストランの隣りの喫茶店で小休止 確かにおいしかったが、さすがにカレーに飽きてしまった。「カレー」という文字もみたくない。が、あと1軒行かなければならないのだ。喫茶店でアイスオレを飲んでインターバルをおき、区役所の入口に血圧計があったことを思い出した。 カレーばかり食べて血圧が上がってないか心配である。測っておいた方がいいだろう。 体調が心配だったので血圧を測る 血圧は正常だった。まだカレーを食べてもいい、ということらしい。 食べるしかない。 目黒区役所にあった本。住(すみ)の世界、私たちの住(すみ)を考える |
【最後は品川区役所のカレー】 最後の区役所カレーは品川区役所でいただく。 ラストスパートである。 品川区役所 品川区役所のカレーは味噌汁付きで300円である。今まで巡って来た中で一番安い。ショーウインドウを掃除していたおばちゃんに「安いですね!」と思わず声をかけてしまった。おばちゃんは少し驚きながら「そうでしょ、安いでしょ」と答えてくれた。 カレーライス(味噌汁付き)300円 これでカレー巡りは終わるのだが、どうしても食券機で「カレー」を押す気持ちになれない。 食堂の外で安いカバンを売っていたので、ちょっと見てみることにした。 エルメスのフールトゥー風が1200円! りっくになります これも「りっくになります」 給料払いで フールトゥー風のバッグを買うべきか少し悩んで結局やめた。1200円は安いが、あくまでも「風」だからである。 さあ、カバンに逃げるのはやめて、カレーを食べよう。 食券を買ってカウンターに出すと「今、ごはんが炊き上がるからちょっと待ってて」と言われた。炊きたてご飯でカレーをいただけるのだ。有り難い。 カレーを待つ 5分後、「カレーの方〜」と大きな声で呼ばれた。ご飯が炊き上がったのだ。 カレー出来上がり 品川区役所のカレー 港区役所のカレーと良く似た、実家ライクなカレーである。タマネギの大きさが実家っぽい。 タマネギの大きさ、切り方が実家ライク あくまでもイメージなのだが、石原軍団の炊き出しカレーはきっとこういうカレーなんだと思う。 実家ライクで石原軍団風のカレーを、いただくことにしよう。 いただこう…… ダメだ。カレーから全くオーラを感じない。4食続くとこういうことになるのだ。 これ以上食べたらカレーを嫌いになってしまう。 それは問題だ。 ラーメン頼んじゃった カレーを嫌いになりたくないのでラーメンを頼んでしまった。カレーは撮影に同行してくれたスタッフに預け、僕はラーメンをすすった。 ラーメン、いいよね いやあ、こういうシンプルなラーメンは実にうまい。 そうだ、今度は区役所のラーメンを巡ることにしよう。 ラーメンだったら4食続いても大丈夫……、だと思う。 (2009/6/8 住正徳) |