バターで目を洗う、というタイトルだけを見て「早速やってみよう!」と冷蔵庫からバターを持って来て目の中に流してはいけない。「アーユルヴェーダ」というインドの伝統医学に基づいた「ネトラバスティ」という眼精疲労回復の為の施術の話である。体だけでなく、精神状態や置かれている環境も含め、すべての調和を図ることで健康に導く「アーユルヴェーダ」。その歴史は5000年にものぼる。5000年っていったら大変な事である。近所のラーメン屋が「創業40年の伝統」と謳って繁盛しているが、5000年に比べたら40年なんてたいしたことない。つい最近である。 まったく関係ないが、近所のコンビニにあった値札を見ていただきたい。 「キン肉マン29週年」と書いてあるが、正解は「29周年」である。しんにょうはいらない。 |
【表参道のサロンで体験】 キン肉マンの事は忘れて、バターで目を洗う「ネトラバスティ」の話に戻る。 仕事柄、パソコンに向かっている時間が長い。夕方頃から目がしばしばし始めて、夜の8時を過ぎると真っ赤に充血してしまう。ほぼ毎日だ。きっとパソコン仕事に向いてないのだと思うが、そんな事も言ってられない。騙し騙し仕事を続けるしかない。腰痛とも騙し騙しつき合っている今、いい加減自分の体を騙し過ぎだと思う。 それにしても最近は目の充血がひどい。「しばしば」から始まって、充血→疲れ目→肩こり→頭痛となっていく。この負の連鎖を何とか断ち切りたい。そこで「ネトラバスティ」の出番である。バターを眼球に注ぐ事で眼精疲労が回復するらしい。 しかし、バターなんて目の中に入れて大丈夫なのだろうか? 食パンを食べてて目の中にバターがはねたりしたら、すぐに洗い流さないと大変だと思う。 一抹の不安を抱えながら、表参道にある「庵・ふうが」というサロンに向かった。 お洒落ストリート表参道から横道にチョロッと入った閑静な場所にある、一軒家のサロンである。 人ん家ライクな玄関から応接に通されて、先生が登場するのを待つ。 テーブルの上には施術メニューが置かれていて、お目当ての「ネトラバスティ」についての簡単な説明が書かれている。 「インド5000年の歴史アーユルヴェーダにおける、眼精疲労回復メニュー。眼部にあたたかいオイルを注いでの施術、まるで目玉が温泉につかっている気分で、施術中はうっとり、施術後はうっとり」 なるほど、気持ち良さそうだ。花粉症の時期に目玉を取り出して水洗いしたら気持ち良いだろうなぁと思ったりするが、バターで洗うなんて考えた事もない。 坂本先生という若くて奇麗な女性が僕にネトラバスティをしてくれるらしい。 最初に料金の3150円を支払って、奥のベッドへ向かう。 ベッドの上で仰向けになると、まずは耳と目の周りのマッサージを施してくれる。これがとても気持ちいい。何なら30分これだけでもいいくらいであるが、今日の目的はネトラバスティ。耳と目の周りのマッサージはネトラバスティではない。 今、原稿を書きながらこの写真を見ているが、いくら気持ち良いからといってこの表情はみっともない。ゆるゆるだ。この時の僕の脳内イメージは次の写真のようだったと思う。 耳と目のマッサージが終わると、いよいよネトラバスティの施術が始まる。 「強力粉を水で練ったものを目の周りにつけていきますね」 坂本先生が優しくささやく。 目の周りに強力粉で土手を作り、バターがこぼれないようにするためである。 自分がどんな状態になっているか見えなくて不安だ。目の周りに強力粉の重みを感じ、焼く前のパンの匂いがしている。 頭にタオルを巻かれ、準備が整った。 頭の上の方から、ほんのりとバターの香りがしてくる。どうやらバターを温めているらしい。 眼球にバターを注がれる前に、バターについて質問してみた。 そのバターは普通のバターですか? 「無塩バターからタンパク質などの不純物を取り除いて、ビタミンB、ヒアルロン酸を加えています」 正式には「ギー」と呼ばているらしい。 僕は充血がひどいので、オプションとして「プリビナ」という充血に効く目薬も加えてもらっている。オプション費用は515円だ。 最初は目を閉じた状態のまま、バターが注がれる。 ドロドロと瞼の上にバターが乗っかってきた。バターの熱を瞼で感じる。バターの香りと強力粉の香りが混ざって、パン屋さんの中に入ったような気分だ。 両目にバターがたまって数秒してから、坂本先生から 「ゆっくりと目を開けてください」 と声をかけられる。 目、開けて大丈夫なのか? 全然大丈夫だった。 しみるかと思ったのだが、全然痛くない。水で目を洗う方がしみるかもしれない。 僕の眼球が今、温かいバターの中に浸かっている。 「眼球を上下左右にゆっくりと動かしてください」 再び坂本先生から指示があった。 眼球を動かす事でバターが中までしみていくのが分かる。 一通り目を動かし終わったら、眼球の中に入ったバターをコットン吸い取ってもらい目を閉じる。目を閉じたら再び瞼の上にバターを注がれ目を開けて眼球を動かす。 この動きを3回。 これでバターで目を洗う施術は完了だ。 しばらく目を閉じたままベッドの上で体を休める。 半分くらい夢の中に入り始めた頃、坂本先生が戻ってきた。 蒸しタオルを目の上に乗せて、ギューッと押してくれる。 これがまた気持ち良い。 耳をマッサージしてもらった時以上にゆるゆるである。自分で見ても腹が立つ。 この時の脳内イメージは、 こんな感じだ。 |
【施術を終えて】 30分で至極の時間は終了した。施術を受けるまではかなり不安だったのだが、実際は全然痛くないし怖くなかった。 充血がちな僕の目はネトラバスティを受けてどうなったのか? before、afterの写真で見比べていただきたい。 というのは嘘ですが、とっても気持ち良かったのは確かです。 また行こう。 取材協力:表参道サロン「庵・ふうが」 東京都渋谷区神宮前5-15-4 お問い合わせ:03-5485-0246 HP:http://mmc-fuga.ortho-k.co.jp/ (2008/9/8 住正徳) |