当サイトでもライターとして参加しているダーリンハニーのお二人から、「コントの原稿を書いてみませんか?」とオファーがあった。ダーリンハニーのコントは大好きなので二つ返事で引き受けて一気に書きました。もし、気に入ってもらえたらライブでやってくれるとのこと。僕の期待は高まる一方だったのですが……、 「以前のネタに良く似たものがあるので……」とやんわりNGのお返事が。 勉強不足でした。ごめんなさい。 ライブでやってもらう事は夢に終わりましたが、この場をお借りして原稿を公開させていただきます。 |
長嶋… 代筆してもらう人 | 吉川… 路上でメールの代筆を請け負う男 |
「必ず相手の心をつかみます? メール代筆屋?」 | |
「ええ、代筆屋です」 | |
「どんなメールでも?」 | |
「ええ、どんなメールでも」 | |
「例えばどんな?」 | |
「彼女とケンカして謝りたいとか、仕事で失敗したから上司に謝りたいとか、今までの人生について親に謝りたいとか」 | |
「謝るメールばっかりですね」 | |
「あ、そんな事ないです。もっと普通のメールも、ぜんぜんやります」 | |
「例えば、恋の告白とかも?」 | |
「ああ、もうそういうのが一番得意です。で、どの恋について謝りますか?」 | |
「だから謝らないって」 | |
「謝っといた方がいいと思いますけどね。あなたみたいなタイプは」 | |
「大きなお世話ですよ」 |
「まあまあまあ、これでしょ? これ?」(親指を立てて) | |
「違いますって、こっちですよこっち(小指を立てて)」 | |
「ああ、こっちね」(小指を少し曲げて) | |
「もう何でもいいですわ。指の形は。で、恋の告白の代筆は? やれるの?やれないの?」 | |
「やりますやります。さあ、こっちに座って」 |
「さあ、どうしましょう。まずは二人の状況を聞きましょうか」 | |
「状況?」 | |
「そうです。出会ってどれくらい経つとか、そういうやつ」 | |
「出会ったのは昨日です。合コンでね、ちょっと」 | |
「ああ、合同コンパですね」 | |
「そんな丁寧な言い方しなくていいですけど、まあ、そうです」 | |
「そこに気に入った子がいた、と」 | |
「(ちょっと照れて)まあ、そんなところです」 | |
「で、メールアドレスの交換には成功した、と」 | |
「(誇らしげに)ええ、そうです」 | |
「(投げやりに)じゃあ、とっととメールすればいいじゃないですか。そんなもん」 | |
「だから、そのメールの代筆を頼もうと思ってるんでしょ、あなたに」 | |
「嫌ですよ。そんなん。だって僕なんかが代筆しなくたって、きっとうまくいきますもん」 | |
「いや、でも、最初のメールって大事じゃないですか、だから、そこをプロのあなたに頼みたいって」 | |
「そんな大事なメールを他人に任せるようじゃダメだ」 | |
「アンタ、自分の仕事全否定だな」 | |
「いや、そ、そりゃあ私はプロですから、確実に相手の心にリーチするメールを考えますけど」 | |
「ですよね、だから、是非」 | |
「何か、さっきからあなたがニヤニヤにしてるのが、癇に障るっていうか」 | |
「(ニヤニヤして)そんな事ないですよ。もう、夕べからずっと悩んでて」 | |
「いや、悩んでないもん。その顔」 | |
「そんな事ないですって、本当、お願いしますよ……」 | |
「うーん…」 |
「あ、自信がないんでしょ、あなた。恋についてはとんと苦手な口だ」 | |
「(声を荒げて)な、何を言うか。俺はジグロだぞ」 | |
「ジゴロでしょ。顔真っちろだし」 | |
「そんな事言われたんじゃねぇ、こっちだって黙っちゃいられませんね。やりましょう」 | |
「よっ、代筆屋!」 | |
「(呼吸を整えながら)まずは、あなたの事を少し教えて下さい。生まれは?」 | |
「東京です」 | |
「なるほど、東京ですね」 |
「よし、最初のフレーズが出来ました。携帯出して下さい」 |
「じゃあ、これから僕が言う通りに打ってくださいね。まずは自己アピール事から」 |
「夕べはどうもありがとう。とても楽しかったです」 | |
「夕べはどうもありがとう。とても…」 | |
「バイ・ザ・ウェイ、僕は東京生まれなんだけれども」 | |
「ちょっと待った」 | |
「何よ?」 | |
「挨拶終わりにいきなりバイ・ザ・ウェイはおかしいでしょ」 | |
「全然おかしくないって。そのくらい意表をついた方がいいんですって」 | |
「そ、そうかな…」 | |
「続けますよ。ほら、携帯」 | |
「は、はい」 | |
「東京生まれなんだけれども、までは打ったね、じゃあ、その続き。東京生まれ、ヒップホップ育ちなんだけれども」 | |
「はい、Dragon Ash。それ、Dragon Ash」 | |
「何言ってんの、違うって」 | |
「だって、その後も分かるもん」 |
「おっ、あなた、代筆屋のセンスあるよ」 | |
「センスっていうか、Dragon Ashだからね。あなたの」 | |
「(長嶋にはかまわずに)ほらほら、あなた、私の代わりにここに座って、さあ」 |
「じゃあ、そういう事であとはよろしく」 | |
「……」 |
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