【時代はムースからワックスへ】 ところがドラッグストアに行って気付いたのだが、ヘアムースの種類が少ないのだ。陳列棚の中での占める割合が小さい。最近のお洒落さんたちはヘアムースを使ったりしないのだろうか? 店員さんに聞いてみた。 「ウェービーヘアが主流の頃は皆さんムースを使っていましたが、最近はワックスでセットする人の方が多いですね」 しばらくヘアムースを使わない間に、世の中の流れはムースからワックスへと移行していたのだ。へアムース=お洒落とか言ってる場合じゃない。しかも丸ごと1本だなんて時代遅れも甚だしい。どうしよう? 「でも、最近はムースタイプのワックスがあって愛用してる方も多いですよ」 なんと、ムースとワックスを融合させた商品があるという。ワックスのスタイリング力とムースの使い易さ、両者の長所が一本に集約されているというのだ。高校時代の僕に教えてあげたい。お前が使っているヘアムースは、やがてムースワックスへと進化していくんだぞ、と。 迷う事なくムースタイプのワックスを購入する事にした。 エアリーなニュアンスが自由自在なのだ LUXマシュマロフィール・ワックス |
【1回分ずつ頭に乗せていく】 早速家に帰りムースワックスの封を切った。このお洒落アイテムを丸ごと1本、150グラムを使ってしまう訳だ。ムースを乗せる手の平も武者震いである。 手の平にムースワックス 初めて触るムースワックスは、僕が使っていたムースの感触とはちょっと違った。プニュプニョとして弾力がある。今までのムースは手の平に乗せるとプシュプシュと溶けていったが、ムースワックスは溶けない。「マシュマロフィール」の商品名そのままに、まさにマシュマロのような触り心地である。 セットしていきます ムースワックスを1回分ずつ手に取り、頭につけていく。マシュマロのようなのでつけると言うよりも乗せるという感覚に近い。この動作を1本なくなるまで続けていくのだ。 10回分 20回分が経過。親知らずが痛み始める 20回分までは順調だったのだが、ここで問題が発生した。ここ数日疼いていた親知らずの具合が悪化してきたのだ。ズキンズキンと脳に響く痛みである。ムース1本分を頭に乗せてる場合ではない。 やめるか? 続けるか? 僕が出した答えは、痛み止めを飲んで続ける、であった。 一旦作業を中断してイブを2錠飲んだ。薬が効き始めるまでしばらく待って、作業を再開する事にした。 痛み止めを飲んで続行 |
【悪化する体調】
しかし、僕に猶予は残されていなかった。頭の上のムースが徐々に溶け始めてきたのだ。痛み止めが効くまで待っていたら、今まで乗せたムースがなくなってしまいそうである。仕方ない。痛みをガマンするしかない。右頬をおさえ、ジクジク痛む親知らずを少しでも鎮めようとする。 「たのむぜ、俺の左足」 左足が義足な事をみんなに隠して試合に挑むテリーマン(漫画「キン肉マン」に登場する正義超人です)の名言であるが、まさに僕もその心境である。たのむぜ、俺の親知らず。 たのむぜ、俺の親知らず 溶けて額をつたうムースが目にしみる。もはや目を開けるのも困難な状況だ。耳元まで落ちてきたムースがジュージュー音を立てている。そして疼く親知らず。 50回経過 50回が過ぎてもまだ、ムースはなくならない。例えば登山をしていたとして、いつまでも頂上が見えなかったらどうだろう。そんな状況でモチベーションを保 つのは困難である。痛み止めはまだ効かず、目も痛い。もうやめてしまってもいいのではないだろうか。あの山に頂上はなかった。そう言い切ったところで誰も 文句は言わないだろう。 どうする? やめるか? 僕が出した答えは、もうちょっとやって本当に辛かったらやめる、である。明けない夜がないように、頂上のない山なんてないのだ。 そしてついに! 1本使い切った! そしてついに、75回目にしてムース1本を使い終わった。 僕の頭の上に大きなムースの山が出来上がったのだ。 サイドビュー トップビュー 途中、何度も投げ出しそうになったが、なんとか1本使い切る事が出来た。この山がムース1本分である。 ようやく痛み止めが効いてきたので、タオルで顔面を拭く余裕が出来た。目を開いて自分の頭のムースの山を眺めた。とてもすがすがしい気分であった。 |
果たして、ムース1本使い切る事に何の意味があるのか。
それは僕にも分からない。ただ、そこにムースがあるから、としか言いようがない。 スタイリングを変えてみた アフロバージョン (2007/10/8 住正徳) |